写真は、昨年末12/28に開催された越冬支援を報じた京都新聞
ところで、12月26日に書いたブログのアクセスが連日多数寄せられている
そこで、その記事(新聞報道の)のきっかけとなった「NPO法人・大津夜まわりの会」の「申し入れ書」を参考として紹介しておきますね
ちょつと長いかも知れませんが
大津市長 殿
大津福祉事務所長 殿
特定非営利活動法人大津夜まわりの会
申し入れ書
第1 申し入れの趣旨
平成15年7月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知(社援保発第0731001号)に従い、居宅生活を営むことのできるホームレスに対しては、敷金等を支給して居宅保護を開始されたい。
第2 申し入れの理由
1 ホームレスに対しては、従前、生活保護は開始できない、施設等での施設保護しか認めないという取扱がなされることが多かった。しかしながらかかる運用が誤りであることは、大阪地方裁判所平成14年3月22日付判決及びその控訴審である大阪高等裁判所平成15年10月23日付判決で明らかにされた(資料1及び2、なお高裁判決については賃金と社会保障1358号にも掲載されている)。
事案は、大阪の西成区のホームレスが市立更生相談所長に対し、居宅保護での申請を求めたところ、同所長が施設保護を内容とする決定を行なったため、当該決定の取消を求めて提訴されたものであり、佐藤訴訟と呼ばれる事件である。
2 地裁判決においては、次のように判示されている。
前記のとおり、法は、生活扶助につき居宅保護を原則とし、これ(居宅保護)によることができないとき、これによっては保護の目的を達 しがたいとき、又は被保護者が希望したときは、収容保護を行なうことができると定めている(法30条1項)。これは、(略)被保護者の生活の本 拠である居宅において保護を行なうという居宅保護が法の目的に適うものであるとの考慮によるものと考えられる。このような法30条1項の趣旨に照らすと、要保護者が現に住居を有しない場合であっても、そのことによって直ちに同項にいう「これによることができないとき」に当たり、居宅保護を行なう余地はないと解することは相当ではない。
(略)
これに対し、前記認定事実によれば、被告相談所長は、住居を有しない要保護者に対して居宅保護を行うことはできないとの法解釈を前提として、本件収容保護決定を行なったものと認められる。
しかし、現に住居を有しないとの一事をもって居宅保護を行うことができないと解すべきでないことは前記のとおりである。したがって、被告相談所長は、住居を有しない要保護者に対する保護の内容を決定するにつき、必要な裁量判断を行なわず、誤った法解釈を前提として本件収容保護決定を行なったものであり、この点において、本件収容保護決定は違法というべきである。
3 地裁判決に対しては被告側が控訴したが、控訴審判決においても、次のとおり、地裁判決が維持された。控訴人は、本件申請後短時日のうちに居宅を賃借しうることが確実であったから、生活扶助を自らの「居宅において」受けることができたと確定できたか、その可能性が高かったというべきである。従って、少なくとも、客観的には、居宅保護によることができないとは確定できなかったにもかかわらず、控訴人は、被控訴人については生活扶助を居宅保護によることができないとして、本件決定をしたことになる。(略)本件決定は、同項ただし書の要件を欠くものということになるから、取消を免れない。
敗訴した大阪市立更生相談所長は上告等を行なわず、同判決は確定した。
4 上記判決と前後して、厚生労働省は平成15年7月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知(社援保発第0731001号)を出した(資料3)。
同通知においては、「ホームレスに対する生活保護の適用に当たっては、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものでないことに留意し、生活保護を適正に実施する」とし、ホームレスに対する生活保護の適用についての基本的考え方を示した。
さらに、同通知2項の「基本方針の留意点」において、面接相談時のヒヤリングにおいて居宅生活を営むことができるか否かの点に留意することを求め(2(1))、直ちに居宅生活が困難な者について施設保護を行なうとしている(2(2))。そして、「(1)により、保護開始時において居宅生活が可能と認められた者(略)については、公営住宅等を活用することにより居宅において保護を行なうこと」とし、さらに「保護開始時において居宅生活が可能と認められた者であって、公営住宅への入居ができず、住宅を確保するため敷金等を必要とうる場合は、『生活保護法による保護の実施要領について』(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)第6の4の(1)のキにより取り扱うこと」としている。
5 この内容をまとめたものが局長通知第6-4-(1)-キであり、問答第4の77によれば、①居宅生活ができると認められること、②公営住宅等の敷金等を必要としない住居の確保ができないこと、③他法他施策による貸付制度や他からの援助等により敷金等がまかなわれないこと及び④保護の開始の決定後、同一の住居に概ね6か月を超えて居住することが見込まれることの4要件のもとに敷金等を支給すべきとしている。
6 このように確定した判決において、ホームレスであっても、法30条1項但書の要件を具備すると認められない限りは、居宅保護を開始すべきとされ、それと同趣旨の厚生労働省通知が出されている。
このように現在においては、ホームレスであるが故に居宅保護は開始できないという運用が違法であることは明白になっている。
7 貴福祉事務所の職員からは、ホームレスに対して敷金等を支給しての居宅保護が出来ない法令上の根拠は法30条であるとの指摘があった。しかし、上述するように判例は、法30条を根拠にホームレスについても居宅保護原則は貫かれると判示した。職員の法解釈は明らかな誤りである。ちなみに佐藤訴訟において、原告は、大阪市立更生相談所長はホームレスには居宅保護は開始できないとの誤った法解釈を前提に収容保護決定を行なったとの主張をしていた。しかし、更生相談所長はそのような法解釈が正しいとの反論はしなかった。ホームレスには居宅保護は開始できないという法解釈そのものは成り立たないことを認めざるを得なかったのである。
8 また、同じく職員からは、他の自治体で敷金等を支給している例があれば示せ、当該自治体に確認するとまで言い切った。しかし、佐藤訴訟の地裁判決が出た時期から一部自治体で敷金等を支給する事例が増え始め、前記厚労省の通知が出された以降はかなりの自治体で通知に従った運用がなされ、敷金の支給をしないという運用を行なっているのは不勉強な自治体に限られる。
ちなみに、大阪においてホームレス支援を活発に行なっている大阪弁護士会所属のある弁護士に確認したところ、ホームレスに対して敷金を支給した事例は、同弁護士一人が関わっただけでも、2008年に入り、大阪市中央区(3件)、大阪市北区(1件)、大阪府寝屋川市(1件)の5件があるとの回答があった。
8 結語
以上の次第であるから、貴福祉事務所の現在の運用は違法と言わざるを得ない。少なくとも上記4要件を満たす要保護者に対しては、敷金等を支給されるよう求める次第である。
以上
敷金は我々の税金ですね
投稿情報: 納税者 | 2009年1 月11日 (日) 19:59