琉球新報 社説2011年6月17日
脱原発ビジョン 福島が日本を変える
福島県の有識者会議「復興ビジョン検討委員会」が脱原発の姿勢を打ち出した。
世界最悪の「レベル7」の事故に見舞われた福島が発するメッセージは、国内外で多くの人々の共感を呼ぶだろう。
原子力から再生可能エネルギーへの転換。福島はその拠点を目指す。再生可能エネルギー、省エネやリサイクルなどを飛躍的、強力に進め、環境との共生を図る。 これまで政府と電力会社は、安全・クリーン・低コストという原発神話を振りまき、補助金をばらまきながら、地方に原発を押し付けてきた。
原発でつくった電力は大都市で大量消費されるのに、多くの国民は原発問題に無頓着過ぎた。安全なら東京に原発を置けばいい。
東京電力福島第1、第2原発には東電や協力会社の社員ら約1万人が雇われ、家族を含め約3万人が原子力に頼ってきた。では原発がなくなると、3万人が路頭に迷うことになるのか。答えは否だ。復興ビジョンが示すように、福島は再生可能エネルギーへの転換を通して新たな産業と雇用が生まれるモデルを示す。電気は必要だが原発は来てほしくないという考えは、日米同盟は必要だが米軍基地は引き受けないという考えに通じる。
基地を押し付けておきながら、反対ばかりせず「基地と共生共存する方向に変わってほしい」と語った防衛施設庁長官すらいた。
しかし、ハンビー飛行場(北谷町北前)や射撃訓練場跡地(同町美浜)、牧港住宅地区(那覇新都心)が示すように、基地と「共生共存」しなくても、返還されると数十倍の雇用と経済効果を生む。
エネルギーや基地など安全保障分野は、中央政府の責任だ。しかし日本政府は地方の意向を無視し、地方の犠牲の下に重要政策を遂行してきた。これは差別だ。
イタリアの国民投票で原発反対が圧倒的多数を占めたことについて、自民党の石原伸晃幹事長は「集団ヒステリー」と語った。見識を疑う。ヨーロッパで起きている意識改革は、福島が打ち出した脱原発路線と軌を一にしている。
福島モデルは、やがて東北地方に広がり、東京一極集中の仕組みを壊し、地方分権型社会に変えていく原動力になるだろう。
沖縄を含め「ふくしまを愛し、心を寄せるすべての人々の力を結集」すれば脱原発は必ず実現する。
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